大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和23(オ)93 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人等の負担とする。

理 由

上告理由第一点について。

記録によると、被上告人両名は昭和二〇年八月七日訴外Dから別紙目録記載の山

林及び同地上の松立木を買受け即日その両者の所有権移転登記を了した上、その後

上告人等五名に対しその所有権の確認、山林の立入伐採搬出等の禁止を求める本訴

を奈良地方裁判所に提起すると共に、その所有権保全のため、仮処分申請をなし、

同二二年二月二四日上告人等に対して前示山林への立入、地上立木の伐採、既に伐

採し未だ搬出しない一切の木材、薪、柴の搬出等を禁止する仮処分決定を得て、同

月二七日同地方裁判所執行吏東本道造に委任してこれが執行をなさしめたのである。

しかるところ上告人等は、右執行吏のなした執行処分の取消、及び上告人等をして

その取消に係る物件搬出のため右地区内に立入ること得せしむる判決を求める本件

訴を提起し、その請求原因として、『係争伐採木材、薪、柴等について右仮処分の

継続せられる限り盗難のおそれがあるばかりでなく、旱天のためこれを枯渇させ後

日その用途を阻害することとなり、且右仮処分により保全せられる請求権は終局的

には金銭補償でその目的を達し得るのである。しかも被上告人等はその後本案訴訟

において上告人等が右山林の松材九五〇石を不法に伐採搬出してこれに対する被上

告人等の所有権を消滅させ、よつて金九万円の損害を蒙らせたとその主張事実を変

更し、これに相応して金九万円及びこれに対する訴状送達の翌日から完済までの年

五分の損害金の支払を請求するに至つた。かくの如く本件仮処分については民訴七

五九条にいわゆる特別の事情があるから、その執行の取消を求める』との趣旨を主

張した。そしてなお、『上告人A1、A2、A3等三名の先代でその死亡により右

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三名においてその遺産を相続したEや、上告人A4及びA5等は、かつて本件山林

の立木を所有し、また、上告人A4においてこれを伐採し該山林上に伐採した松材、

薪、柴、等を所有していたことはあるが、本件仮処分決定のなされた当時にあつて

は、右山林にあつた伐採木材、薪、柴等は上告人等において所有し占有していたの

ではなく、訴外F及びGの両名が所有し占有していたのである』旨を附陳したので

ある。原判決は、右上告人等の自陳する事実関係に基き本件取消の訴はその主張自

体により保護の利益なきものであるとし、上告人等の請求を認容した第一審判決を

取消し、その請求を排斥したのである。

思うに、上告人等の自陳するところによれば、本件仮処分は、当時その目的物で

ある伐採木材、薪、柴等を所有もせず占有もしていない上告人等に対してこれが搬

出の禁止を命じたことに帰するのであるから、上告人等はかかる仮処分決定が執行

されたからとて、何等法律上不利益を受けるものでないことは明白であり、従つて

(右仮処分の債務者として該仮処分決定に対し異議を申立てることは格別)その執

行の取消を訴求すべき法律上の利益を有しないことは多言を要しないところである

(況んや、被上告人等に対し積極的に係争地区内への立入を認容すべきことを求め

得る何等の理由もない。)上告論旨は、本件伐採木材、薪、柴等は仮処分当時訴外

F及びGの所有占有に属していたのであるが、元来右物件は上告人A6兄弟の先代

亡Eから上告人A5へ、右A5から前示訴外人等へ順次転売されたものであつて、

上告人等は右訴外人等に対し売主として担保責任を負担しているのであるから本件

仮処分の執行の取消を求める法律上の利益があると主張する。しかしながら上告人

等の主張するところによるも、既に目的物件の所有権ないし占有権は右訴外人等に

移転されているばかりでなく、本件仮処分は被上告人等を債権者、上告人等を債務

者として係争山林内への立入、同地上立木の伐採及び既に伐採した木材、薪、柴の

搬出等を禁止することだけを内容としたものであるから、(目的物件の占有は執行

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吏その他の第三者に移されてはいない)かかる仮処分の執行は、仮処分債務者でな

い右訴外人等がその占有権、所有権に基づいてこれが搬出をなすにつき何等妨げと

なるものではない。されば売主の担保責任を云々する所論の採るべからざることは

明らかであつて、論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決は本件訴を保護の利益なきものとして排斥したのであり、この判旨の正当

であることは前段説示のとおりである。従つて所論のような請求の理由あるや否や

の点に関する主張につき原審が判断を与えなかつたのは当然であり、論旨は採用に

値しない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、

主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

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